『オリエンタリズム (サイード) - Wikipedia』
従来は美術における東洋趣味などを指す語だった「オリエンタリズム」を、西洋の東洋に対する思考様式として定義し、人種主義的、帝国主義的であるとして批判的に検討した。その検討を通じて、人間は異文化をいかにして表象するのか、また異文化とは何なのかという問題提起も行なった。
サイードは『オリエンタリズム』や『文化と帝国主義』を念頭に、「自分で書いた本のなかで覆そうと闘ってきた相手は、「東洋」(イースト)とか「西洋」(ウエスト)といった虚構(フィクション)であり、またさらに、人種差別主義が捏造したところの従属人種、東洋人、アーリア人、ニグロといった本質主義的分類法であった。と同時に、いっぽうで、過去において植民地主義の暴虐を幾度もかいくぐってきた国々では、原初にあった無垢の状態が西欧人によっておかされたという被害者意識が強いが、わたしは、こうした考えかたに与(くみ)することなく、つぎの点をくりかえし強調してきた。東洋とか西洋といった神話的抽象概念は端的にいって虚偽であるが、同じことは、かつての植民地国が西欧に向けて発する非難のレトリックのなかで駆使されるむきだしの対立図式についてもいえる。文化は、たがいに混じりあい、その内容も歴史も、たがいに依存しあい、雑種的なものであるため、外科手術的な切り分けをおこなって、<東洋>(オリエント)とか<西洋>(オクシデント)といったおおざっぱで、おおむねイデオロギー的な対立をこしらえることなどできないのである」1。 /icons/hr.icon